中東諸国で熱波 砂漠では80度
2010年6月23日

イラクで最高気温54度を記録したそうだ。
砂漠地帯では、今後80度に達する可能性があるんだって。

想像しただけで汗が出てくるわね。

砂漠を歩きながら
砂に足を取られるたび、靴底から熱がじんじんと染み込んでくる。
まるで地面そのものが燃えているようだ。
手綱を握る指先にも、乾いた革の感触とともに、昼の太陽の熱が伝わってきた。
ラクダは黙って歩き続ける。
重たいまぶたを半分閉じたまま、ただ前だけを見据えて。
風が吹けば一瞬の救いかと思うが、それは涼風ではなく、焼けた砂を巻き上げる熱風だ。
頬を打つたび、まるで熱い刃で切りつけられるように痛む。
鼻腔に入り込む砂は、血の匂いに似た鉄っぽさを帯び、喉の奥にざらついた苦味を残す。
遠くに揺れる陽炎は、蜃気楼の街を形づくる。
塔の影、緑の並木、噴水のきらめき──けれど近づけばただの砂。
まやかしだと知りながらも、目はどうしてもそれを追ってしまう。
昔、旅人の書き残した日誌には「砂漠の昼は灼熱、夜は凍える」とあった。
だが、いま目の前にある昼の灼熱は、彼らの時代よりも一層激しいのではないだろうか。
未来に思いを馳せると、胸の奥にざらついた不安が広がる。
もしこの熱が常態化すれば、人はどこに居場所を見いだせるのだろう。
やがて太陽が沈み、夜が訪れる。
昼の熱が嘘のように冷え、砂の大地は急速に冷たさを取り戻す。
頭上には、都会では決して見られない数の星々が広がり、天の川が砂漠を横切る川のように輝いていた。
昼は容赦なく人を追い詰め、夜はそのかわりに宇宙の深さを示す。
灼熱と静寂──この極端な二面性こそが、砂漠という存在を形づくっているのだろう。
果てしない砂の海を越えながら、私は今日もまた、静かな孤独と、星々のまなざしに見守られながら歩き続ける。(亀吉)