地球に似た惑星 見つけた!?

この惑星「ケプラー22b」は地球から600光年の距離に存在し、地球の2.4倍の大きさ、表面温度は22℃、水も存在する可能性があるらしい。

出典 :
Kepler-22b: Closer to Finding an Earth
https://www.nasa.gov/image-article/kepler-22b-closer-finding-an-earth
Kepler-22b - Comfortably Circling within the Habitable Zone
https://www.nasa.gov/image-article/kepler-22b-comfortably-circling-within-habitable-zone/
NASA's Kepler Confirms Its First Planet In Habitable Zone
https://www.lpi.usra.edu/features/kepler/120611/

星の方舟 ― ケプラー22b航海日誌
第一章 「地球を捨てた日」~ジョナス・ハーラン提督の日誌
出発から、幾ばくかの年月が過ぎた。
この宇宙船の壁の外には、永遠の夜が広がっている。星々は瞬かない。
ただ燃え尽きることのない焔(ほむら)のように、そこに在るだけだ。
我々は地球を捨てた。
あの惑星は、もはや緑も青も失い、煤(すす)の匂いに覆われた。
核の閃光と、長い年月の汚染とが、母なる星を沈黙させたのだ。
人類は、最後の賭けに出た。
六百光年先の蜃気楼 ― ケプラー22bへ。
そこは「ハビタブルゾーン」という甘美な言葉で語られる、夢のような星。
地球の二倍以上の大きさ、平均温度は22度。水があるかもしれない、生命が芽吹いているかもしれない。
だが、私たちは誰も見ていない。
それが楽園か、地獄かすら知らず、ただ星図と信号を頼りに進むだけだ。
夜、静まり返った居住区で、私はときおり幻をみる。
子どものころ遊んだ草原、夏の夕立、遠くに響いた雷鳴。
あの記憶はもう還らない。
けれど、もしかすれば未来の子どもたちが、ケプラー22bの大地で同じように駆け回り、雨の匂いを胸いっぱいに吸い込む日が来るのかもしれない。
希望か、絶望か。
その答えを確かめるために、我々はこの闇を渡っている。
第二章 「船内の生活」~ジョナス・ハーラン提督の日誌
船内の暮らしに、不自由はない。
食糧は人工的に合成され、飢えることは決してない。
運動のためのホールもあり、仮想現実の教室で学ぶこともできる。
ゲームに熱中する者もいれば、静かに瞑想する者もいる。
ただ、地球のように自然と触れ合ったり、季節の変化を感じることはできない。
大地を踏みしめ、雪に触れることは許されない。
娯楽は閉じた内部での再現に過ぎないのだ。
さらに、この船には厳格なルールがある。
就寝・起床時刻の厳守、資源の配給制限、通信の監視、職務の強制割り当て、結婚の許可制。
ここは方舟、未来を担う人類を乗せた繭(まゆ)なのだ。
ルールを守れる者にとっては、ここは楽園に近い。
むしろ地球より快適かもしれない。
だが、人は本当に「管理されるだけ」で幸せなのか。
時折、そんな問いが心をかすめる。
第三章 「未知への恐怖と夢」~ジョナス・ハーラン提督の日誌
閉ざされた宇宙の旅は、心を蝕んでいく。
患者の多くが心療科に押し寄せ、医師は疲弊していった。
不眠、幻覚、強迫観念。
「宇宙は虚無だ」という囁きが、乗員たちの胸を掴んで離さなかった。
私もまた、夜に夢を見る。
夢の中で、ケプラー22bの大地に立つ。
そして、自分と瓜二つの人間が、こちらにおいでと手招きしているのだ。
突然、警告音が鳴り響いた。
赤い光が船内を満たし、誰もが息を呑んだ。
機関部を調査したが、異常はどこにも見つからなかった。
数時間後、警報は不思議と鳴りやんだ。
まるで最初から何もなかったかのように。
なぜあの時、船は悲鳴をあげたのか?
「行くな」という声だったのか?
それとも、未知の存在がこちらを見つめていたのか?
答えは誰にもわからない。だが、不安だけが静かに残った。
第四章 「星間航路での出来事」~アダム・ヴァンス大佐の航海録
ある日、観測班が発見を告げた。
目的地ではないが、居住の可能性がある極寒の惑星が、航路のそばに浮かんでいたのだ。
酸素も水もある、だが生存は過酷だろう。
氷原に覆われ、太陽の光は乏しい。
船内に議論が巻き起こった。
「旅を急ぐべきだ」「ここで降りるべきだ」。
議論は夜を徹して行われ、結論は「自由」にゆだねられた。
希望者はその惑星へと小型船で旅立った。
別れの瞬間、誰もが無言だった。
宇宙は冷たい。だが、そこに立ち止まるのもまた、人の選択だ。
残された我々は再び、六百光年先の幻を追った。
最終章 「惑星に到着」~レイナ・ハーラン一等航宙士の日誌
目の前に、ケプラー22bが姿を現した。
深い青と緑に覆われた美しい球体。
私は一度も地球を見たことがない。
だが、胸の奥が懐かしさで震えるのを感じた。
祖先の記憶が、DNAの奥底で目を覚ましたのだろうか。
探査船が先行し、大気を調べた。
酸素は豊かで、水もある。危険はなかった。
「ここに降りよう」船内に歓声が満ちた。
大気圏に突入すると、不思議な感覚が身体を包んだ。
時間がゆっくりになり、過去の記憶が流れ込んでくる。
私たちは、幸福感に満ち溢れていた。