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豊玉姫とマチカネワニ

2014年12月23日
マチカネワニと豊玉姫の画像
アヒルの顔 この間、友人と熱川の「バナナワニ園」に遊びに行ったけど、ワニってあんなに大きい生き物だなんて知らなかったわ!
ウサギの顔 イリエワニとか巨大だよね。
Pちゃん食べられなくてよかったね!
そういえば、昔の日本にも大型のワニが生息していたって知ってた?
アヒルの顔 まあ、怖い!
「昔」というからには、今はもう絶滅してるってことよね?
ウサギの顔 マチカネワニが有名だよね。
全長7メートルもあったといわれている巨大なワニなんだ。
化石が「待兼山」で発見されたから、そう呼ばれているよ。
それから、学名が日本神話に登場する豊玉姫(トヨタマヒメ)にちなんで付けられているんだ。
アヒルの顔 旦那に自分の本当の姿(ワニ)を見られちゃって、ショックで実家に帰っちゃう話ね。
ロマンチックだけど、ちょっと切ない命名ね。
マチカネワニのイメージ画像

マチカネワニ(学名:Toyotamaphimeia machikanensis)は、約30〜50万年前(第四紀更新世中期・チバニアン)に現在の日本に生息していた大型の絶滅ワニ類です。
全長は推定約7メートル、体重は約1.3トンで、頭骨の長さは1メートルを超えることから、非常に巨大だったことがわかります。

1964年、大阪府豊中市の待兼山丘陵(大阪大学豊中キャンパス)で新校舎の建設工事中、近隣の高校生が偶然にワニの化石を発見しました。
調査の結果、ほぼ全身に近い保存状態の良い骨格が発掘され、日本で初めての「ほぼ完全なワニ化石」として注目されました。

このワニは、発見地の「待兼山」にちなみ「マチカネワニ」と呼ばれ、学名は日本神話に登場する海神の娘・豊玉姫(トヨタマヒメ)に由来します。
命名当初はマレーガビアル属に分類されましたが、1983年に独立属の Toyotamaphimeia(トヨタマフィメイア)として再分類されました。

マチカネワニは、細長い吻部(口先)を持ち、主に魚食に適応したと考えられます。
一方で、後方の歯は太く、頑丈で、かみ合わせる力は最大1.2トン(12,000ニュートン)に達したと推定されています。
これにより、魚だけでなく、当時生息していた小型哺乳類や鳥類をも捕食していた可能性があります。

当時の日本列島は温暖湿潤な気候で、ナウマンゾウ、ヤベオオツノジカ、シナサイなどの大型哺乳類と共存していました。
化石には骨折の痕跡や治癒の痕も見られ、捕食行動や同種間の闘争の激しさがうかがえます。

マチカネワニは、海面低下による陸橋形成の時期に、日本列島へ渡来したと考えられています。
しかし、氷期の進行による寒冷化に伴い魚類資源が減少したことで、生態系に適応できず絶滅した可能性があります。

類縁種と思われる化石が大阪府岸和田市(通称「キシワダワニ」)や台湾(Toyotamaphimeia taiwanicus)でも発見されています。

マチカネワニの化石は2014年に国の登録記念物に指定され、大阪大学総合学術博物館にて展示されています。
また、豊中市のマスコットキャラクター「マチカネくん」のモデルとしても知られ、地域文化に根付いた存在です。

さらに、中国神話における「龍」の伝説が、かつて存在した大型のワニ類(例えばマチカネワニの近縁種)に由来する可能性があるとする仮説も提起されていますが、これはあくまで一説にすぎず、学術的には未確定です。

豊玉姫のイメージ画像

豊玉姫(とよたまひめ)は、日本神話に登場する海神の娘で、海神ワタツミ(綿津見神/海神)の宮殿に住む海の女神です。
『古事記』や『日本書紀』に記述があり、特に「海幸彦・山幸彦」の物語で重要な役割を果たします。

豊玉姫は、山幸彦(ホオリ、火遠理命)と結ばれる女神として知られています。
山幸彦が兄・海幸彦(ホデリ)との釣り針の貸し借りをめぐる争いから海神の宮殿を訪れた際、彼女と出会い、恋に落ちます。
二人は結婚し、3年間海神の宮殿で暮らしましたが、山幸彦が地上に戻ることを決意します。

豊玉姫は妊娠しており、後に地上で子である鵜葺草葺不合命(うがやふきあえずのみこと)を産むため、山幸彦を追って地上にやってきます。

しかし、豊玉姫は出産時に「本当の姿を見ないでほしい」と頼みます。
彼女の真の姿は「ワニ」(古語ではサメや海獣一般を指すことがある)であり、山幸彦が約束を破ってその姿を見てしまったため、豊玉姫は恥じて海へ帰ってしまいます。

神と人との結びつきの儚さを象徴したエピソードですね。

豊玉姫と山幸彦の子である鵜葺草葺不合命は、神武天皇(初代天皇)の父とされ、皇室の祖先神話に連なります。

豊玉姫は、海神の娘として海と豊穣を象徴し、子孫繁栄や安産の神としても信仰されています。
彼女の妹である玉依姫(たまよりひめ)も、鵜葺草葺不合命と結ばれ、神武天皇の母となりました。

彼女は、海と陸の架け橋となる存在として、日本の神話や文化に深い影響を与えています。
全国の神社で祀られており、特に和歌山県の日前神宮・國懸神宮や、鹿児島県の霧島神宮などに縁が深いとされます。

また、豊玉姫の「ワニ」の姿は、海の力を象徴するものとして、古代の自然崇拝やアニミズムの考えを反映していると考えられています。

前述のマチカネワニ(Toyotamaphimeia machikanensis)の学名は、豊玉姫にちなんで命名されました。
彼女がワニ(またはサメ)の姿で現れる神話から着想を得ており、古代の巨大ワニと神話の結びつきが示唆されています。

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