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地球温暖化で危険な真菌が増殖

2025年6月 3日
ウサギの顔 地球温暖化の進行につれて、アスペルギルス属などの真菌が新たな地域へ大量拡散する可能性が最近の研究で示されているよ。
特定のアスペルギルス種は、気候変動の激化に伴って北米、ヨーロッパ、中国、ロシアの新しい地域に生息域を拡大すると予測されているんだ。
アヒルの顔 アスペルギルスって、カビの一種よね?
カビキラーで撃退できないかしら。
ウサギの顔 より温暖な環境に適応でき、アスペルギルス症の原因菌となるアスペルギルス・フミガータス(A. fumigatus)。
ピーナッツなどに生えてアフラトキシンという強い発がん性毒素を産生し、多くの抗真菌薬に耐性を示すことで知られるアスペルギルス・フラバス(A. flavus)。
黒いカビで、クエン酸や酵素の工業生産にも使われる有用菌である半面、食品を腐敗させることもあるアスペルギルス・ニガー(A. niger)。
これらのアスペルギルス属がもたらす健康被害が気になるところだ。
アヒルの顔 梅雨の時期になったら、さらに猛威をふるいそうね。
絶滅させる方法は無いのかしら?
ウサギの顔 先ほどの、アスペルギルス・ニガーもそうだけど、有用菌もあるんだ。
アスペルギルス・オリゼー(A. oryzae)は、「麹カビ」のことで、味噌・醤油・日本酒などに使われる良性カビだよ。
人類と共存していく良い方法はないのかなあ?
アスペルギルス・フミガータスの画像

アスペルギルス属真菌の地球温暖化による拡散予測研究

研究の背景と重要性

アスペルギルス属の真菌胞子は土壌、空気、家庭内など至る所に存在し、人は毎日数百個のこれらの微細な胞子を吸い込んでいます。
健康な人には無害ですが、免疫力が低下した人には生命に関わる感染症を引き起こし、農作物にも深刻な被害をもたらします。

研究方法

研究者たちは、3つの主要なアスペルギルス種(アスペルギルス・フミガータス、アスペルギルス・フラバス、アスペルギルス・ニガー)について、 以下の手法で分析を行いました。

データ収集:世界規模の真菌発生データベースから情報を収集
気候モデル:3つの温室効果ガス排出シナリオ(低排出・中程度・深刻)で2041年から2100年までの予測
分布予測:最大エントロピー法を用いて生息適地の変化を予測

主な研究結果

1. 現在の分布パターン

アスペルギルス・フミガータス:北半球の温帯地域を好む
アスペルギルス・フラバス・ニガー:より温暖な熱帯気候を好む

2. 将来の分布変化(深刻な温暖化シナリオ)

北方への移動:すべての種で生息適地が北方にシフト
アスペルギルス・フラバス:アフリカ、南米、オセアニアで減少、ロシア、中国、北米で拡大
アスペルギルス・フミガータス:南半球と熱帯地域から撤退、スカンジナビアやアラスカなど北方の涼しい地域に集中

3. 農業への影響

作物感染リスクの変化:主要作物(トウモロコシ、米、小麦)での生息適地が大幅に縮小
トウモロコシ:現在の1,910万km²から2090年には680万km²に減少
米:880万km²から200万km²に減少

4. 人口への影響

現在の曝露人口:
アスペルギルス・フミガータス:19億8,000万人
アスペルギルス・ニガー:9億500万人
アスペルギルス・フラバス:8億4,600万人

特に注目すべき発見

隠れた脅威の発見

胞子のサイズはわずか2-3ミクロンで肺の防御機構を回避
家庭のコンポスト(50°C超えた場合)が予想外の胞子放出源となる
英国のコンポストサンプルから薬剤耐性株を発見

臨床データとの相関

14カ国の調査で、土壌中の真菌の存在と病院での侵襲性アスペルギルス症の臨床発生率が直接相関することが判明しました。

研究者からの警告

マンチェスター大学のノーマン・ファン・レイン博士は、「既にカンジダ・アウリスが気温上昇により出現していますが、他の真菌が環境変化にどう反応するかの情報はほとんどありませんでした。
真菌病原体は将来、世界のほとんどの地域に影響を与える可能性があります」と述べています。

今後の対策の必要性

この研究は、気候変動が公衆衛生と農業の両方を脅かす主要なアスペルギルス種の世界的分布に与える影響を明らかにしました。
早期監視システム、気候適応型の医療計画、農業戦略の策定が、これらの真菌がもたらすリスクを軽減するために不可欠であると結論づけています。

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