Incorrupt Body(インコラプト・ボディ) ～ 不朽体

代表的な不朽体

聖女ベルナデッタ

本名：マリー＝ベルナデット・スビルー（Marie-Bernadette Soubirous, 1844～1879）

出身地：フランス南西部、ルルド

生涯： 14歳のとき、ルルドの洞窟で「白い衣をまとった女性」（聖母マリアとされる）の出現を18回体験しました。
聖母から「泉を掘りなさい」と告げられ、そこから湧いた水は病を癒やす奇跡の水とされるようになります。
その後修道女となり、修道院で35歳の若さで亡くなりました。
1933年に教会から列聖され、聖人として崇敬されています。

遺体と不朽体の報告： 1879年に亡くなった後、1909年（没後30年）の列聖調査で墓が開かれた際、遺体は予想に反してほとんど腐敗していないことが確認されました。
その後も1919年、1925年に再調査が行われ、同様の報告があります。
現在もヌヴェール修道院に安置され、顔や手は保存のため蝋で覆われていますが、全体は「安らかに眠るような姿」で公開されています。

巡礼地： ルルド（Lourdes）：年間数百万人が訪れる世界的な巡礼地。特に病気治癒を願う人々が泉の水を求めます。
ヌヴェール修道院（Saint-Gildard, Nevers）：聖女ベルナデッタの遺体が安置され、巡礼者が訪れる重要な聖地となっています。

聖フランシスコ・ザビエル

生涯： 1506年生まれ。カトリックの宣教師として日本にも来訪し、キリスト教布教を行った人物です。
1552年、中国本土へ渡る直前に上川島（広東省沖）で亡くなりました。享年46歳。

遺体と不朽体の伝承： 当初は石灰で覆われ一時的に埋葬されましたが、数か月後に掘り返した際、驚くほどに遺体の保存状態が良好とされました。
その後、遺体はインド・ゴアに運ばれ、現在もボム・ジェズ教会（Basilica of Bom Jesus）に安置されています。
10年に一度の御開帳(遺体の公開)には、世界中から巡礼者が訪れます。
ただし、長い年月の間に部分的な腐敗や損傷もあり、保存のために修復や防腐処置が施されています。
ベルナデッタのような「完全な不朽体」ではなく、「部分的に保存状態が良かった遺体」と位置づけられています。

聖カタリナ・ラブレ（1806～1876）

フランスの修道女で、「奇跡のメダル」を普及した人物として知られています。
1933年の列聖調査の際、遺体が腐敗していないことが確認されました。
現在もパリの「奇跡のメダイユ教会」に安置され、巡礼者が多く訪れます。
顔や手は保存のために蝋で覆われています。

聖ヨハネ23世（1881～1963）

第二バチカン公会議を主宰したローマ教皇。
2001年に遺体が発掘された際、比較的良好な状態で保存されていたと報告されました。
現在はバチカンのサン・ピエトロ大聖堂でガラスの棺に安置されています。

聖フランチェスカ・サヴィエリ・カブリーニ（1850～1917）

アメリカで初めて列聖された女性聖人。
遺体がほとんど腐敗せず、ニューヨークやシカゴで信仰の対象となっています。

聖シャルベル・マクルーフ（1828～1898）

レバノンのマロン派修道士。
埋葬後も長く柔らかい体のままだったとされ、「奇跡の聖人」として今も人気があります。
彼の墓地は中東の巡礼地になっています。

不朽体はカトリック信仰において「神のしるし」として重要視されていますが、科学的には埋葬環境や保存処置によって説明できる部分もあります。
信仰と科学の両方から注目される現象であり、歴史や宗教文化を考える上で非常に興味深い対象です。
巡礼地としても世界中の信者や観光客を惹きつけており、聖人たちの物語とともに現代に受け継がれています。